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 1963年に開館した神戸の賀川記念館の初期事業のひとつで「カギっ子」対策として取り組まれた「ひまわり学級」が、長田区番町地区に設けられていたイエス団の「天隣館」で開設され、最初の教師を引き受けたれたのが、河野洋子先生であったことを、当時の新聞記事(昭和43年5月17日付)と共に、前回取り上げた。
 ところで、内容の重なるもうひとつの新聞記事の切抜きがあった。河野先生の退任と後任へのバトンタッチの記事である。
記事の内容は、以下のとおり(河野先生のお名前が吉田先生となっている経緯に就いては前回触れた)



長い間ごくろうさま 
       長田・番町地区の「天隣ひまわり学級」
        吉田さん 後任にバトンタッチ


 「吉田先生、どうも御苦労さんでした」「鈴木先生、あとはよろしく頼みます」−25日、神戸市長田区番町地域で2年間カギっ子のために献身的な世話をしてきた吉田洋子さん(37)=神戸市灘区篠原南町1−16=が、子供たちに惜しまれながら、後任の鈴木絹代さん(24)にバトンタッチして「天隣ひまわり学級」を去って行った。

 同ひまわり学級は41年5月、ともかせぎの家庭が多い同和地区を対象に市教委が“地域ひまわり学級”として開設したもののひとつ。吉田さんは賀川記念館の紹介で初代の保母さんとして着任した。地区の小学校(水木小)から指定を受けた子供たち(25人)を預かり、ずいぶんてこずらされたこともあったようだ。
 しかし吉田さんは、18年前同じ天隣館に市立長田保育所があった当時の経験を生かして、子供たちの中へとけこんでいった。むしろいまではさんざんてこずらせた子供の方が思い出に残っており、別れがつらかったそうだ。

 今度辞任することになったのは、2年間他人の子の面倒をみているうちに、小学校へ行っている自分の子供がカギっ子になりそうだということに反省させられたから。あとのことも「新しく来られる鈴木絹代先生は、若い立派な方だと聞いているから、安心してまかせられる」と思い切って家庭に戻ることにした。

 この日は、今年度のひまわり学級開校式が行われ、新任の鈴木先生と初対面。先輩らしく2年間で得た教訓をじゅんじゅんとアドバイスして引き継ぎを終えた。

    *      *       *       *

 記事の中の写真には「こどもたちが見守るなかで引き継ぎの握手をする吉田先生(左)と鈴木先生=長田区四番町、天隣館で」とある。

 前回の記事は昭和43年5月17日付けであったが、今回のものは掲載日が判らないが、よく読むと、こちらの方が早い記事かもしれない。
 昭和43年の新年度がスタートした4月25日の開校式のようである。
 前回確かめせずあの記事を地元神戸新聞と記したが、当時は朝日新聞神戸支局に熱心な記者の方もいたので、若し前回が神戸新聞であればこちらは朝日新聞であるかその逆かもしれず、或いは別の新聞であるかもしれない。未確認である。



 バトンタッチを受けた鈴木絹代先生は、聖和大学を卒業され、関西学院の大学院で学ばれた鈴木慎梧牧師と結婚され、鈴木牧師は我々と同じく「労働牧師」の実験を開始して、長田の下町でゴム工場の労働者となった友人である。その後長く神戸で「タクシードライバー」の牧師として、開拓的なお仕事を続けられる、尊敬する同僚のお一人である。
 鈴木絹代先生はこの「ひまわり学級」において「こどものことば」に注目して学童たちと文集など発行しておられたが、絹代先生はその後、お人柄その儘がうたになったような4冊の詩集「よかった」「もんたぜ」「だいじょうぶ」「ありがとう」(いずれも「編集工房ノア」発行)を発表してこられ、地元神戸新聞にも度々登場したお方である。
 しかし、惜しい事にがんの病いのため本年2月14日、65歳の生涯を閉じられた。没後本年9月「第44回名筆研究会展」では、母をテーマにした鈴木絹代作品が、多くの書家の手で表現され、深く強い感動を残した。

 この御夫婦には、私たちもいつも大切ものを呼び覚まされてきた。
 絹代さんの作品ひとつを、感謝をこめて、ここに挙げさせていただきたい。



          夕  陽

     洗濯ものを取り入れようと
     ベランダに出た

     夕陽が今にも
     海へ沈もうとしている
     一人で見るのは
     もったいないなぁと
     思っている時
     電話のベル

     今、おひーさんが沈みようねん
     はよう見てみー
     と弾んだ夫の声



               (2009年12月20日記す。鳥飼慶陽)




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